住宅ローンを保証会社が代位弁済した後に、住宅ローン特則付小規模個人再生は使えるか?

住宅ローン特則付小規模個人再生を使えるタイムリミット

 住宅ローン特則付小規模個人再生は、住宅を残したまま住宅ローン以外の債務を圧縮することのできる非常に魅力的な制度ですが、その分、通常の小規模個人再生に比して利用するための要件が厳しくなっています。
 その中の一つに、対象となる住宅資金債権は、「住宅資金貸付債権を有する者に代位した再生債権者(弁済をするについて正当な利益を有していた者に限る。)が当該代位により有するものを除く。」(民事再生法198条1項)とされている点です。
 少し分かりにくいかもしれませんが、典型としては、住宅ローン返済が滞った結果、保証会社が代位弁済をして、住宅ローン債権が保証会社に移転してしまったような場合のことを指しています。

 そうです。保証会社が代位弁済をしてしまうと、原則として住宅ローン特則は使えないということになるのです。
 その意味では、他の債務を滞納することと、住宅ローンを滞納することは大きく意味が異なることになるため、債務者からすると、できる限り住宅ローンを優先して弁済していくことがメリットになることが多いでしょう。

代位弁済後も諦めない。本当のタイムリミット

 上記規定のため、保証会社が代位弁済をしてしまうと、債務者にとって非常にメリットの大きい住宅ローン特則付小規模個人再生は使えないのが原則です。
 しかし、これを厳密に運用すると、ギリギリまで返済をし続けた債務者が、いよいよ返せないので再生手続をしたいとなった場面で、例えば債務整理を依頼する弁護士を選んでいる間などに保証会社に代位弁済されたようなケースでも、住宅ローン特則付小規模個人再生を使えないということになってしまい、債務者にとって不利益が大きくなりすぎます。

 そこで、法は、保証会社が代位弁済をしてから6ヶ月経過する前までに個人再生手続の申立があった場合には、住宅ローン特則付小規模個人再生手続を使うことができると定めました(民事再生法198条2項)。

 したがって、保証会社が代位弁済をした後、6ヶ月以内に住宅ローン特則付小規模個人再生の申し立てができた場合には、自宅を失わなくて済む可能性が高まります。
 逆に言えば、保証会社の代位弁済後6ヶ月を経過してしまうと、自宅を守るということは難しくなるということです。
 保証会社の代位弁済後6ヶ月が住宅ローン特則付小規模個人再生を利用するためのタイムリミットというわけです。

もう1つのタイムリミット、競売手続

 保証会社の代位弁済後6ヶ月が住宅ローン特則付小規模個人再生を利用するためのタイムリミットとと言いましたが、実は、まだ気をつけなければいけない点があります。

 それが、競売手続です。 
 住宅ローンに設定された抵当権が実行され競売手続が進んでいる場合、入札が完了してしまうと、住宅ローン特則付小規模個人再生手続を使うことができなくなってしまうのです。

 そのため、競売手続が進んでいる場合には、できる限り急いで住宅ローン特則付小規模個人再生手続の申し立てを行い、同時に、裁判所から競売手続の中止命令を出してもらう必要があります(民事再生法197条1項)。
 単に住宅ローン特則付小規模個人再生手続を申し立てるだけでは競売手続は止まらない点に気をつけてください。

住宅ローンの巻き戻しを受けるために

 まとめると、住宅ローン滞納後に、住宅ローン特則付小規模個人再生を利用するためには、保証会社の代位弁済後6ヶ月以内で、かつ競売手続の入札日前に裁判所から競売手続中止命令を発令してもらうことが必要になります。

 要するに、少しでも早く申し立てをしましょうということです。住宅ローンを滞納してしまったが、住宅ローン特則付小規模個人再生を利用したい方は、早めに弁護士に相談に行かれることをお勧めします。

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