友人などへの優先的弁済
Q.
友人など一部の債権者に優先的に弁済できますか?
A.
裁判所を介さずに行う任意整理の場合、
特定の債務についてだけ対象とすることができますので、
友人など一部の債権者は対象から外すことができ、
優先的に弁済しても問題ありません。
これに対し、自己破産や個人再生の場合、
「債権者平等」という原則が厳格に貫かれるため、
債務者が、自分に借金返済の支払能力がない(今ある借金の全額を返済していくことが不可能となった)状態を認識していながら、
友人など一部の債権者にだけ優先的に弁済することはできません。
自己破産や個人再生は、裁判所の手続によって、
借金の支払を免除されたり、大幅に減額されるものであり、
債権者からしてみれば、非常に損とも言える制度です。
そのような損な結果を債権者に強いるわけですから、
せめて、債務者が所有する財産の価値に相当する配当は債権者間で公平に分けたり、
その価値に相当する範囲で平等な返済を受けよう、
というのが、「債権者平等の原則」の考えです。
それでは、友人など一部の債権者に優先的に弁済することができない、というのは具体的にどういうことか、以下に説明します。
自己破産 (免責不許可と否認権の行使)
自己破産の場合、
債務者が自分に支払能力がないと認識した時点より後(弁護士による債務整理の受任通知発送後など)に、
一部の債権者にだけ優先的に弁済する行為(偏頗(へんぱ)弁済)は、
「免責不許可事由」に該当します。
免責不許可事由とは、破産者の残債務の支払義務を免除する「免責許可」決定が出せない事由ということで、免責不許可事由があることで免責不許可になると、破産をしても、結局、残債務の支払義務を免れないことになります。
ただし、免責不許可事由に該当する事由がある場合でも、その程度が重くなかったり、やむを得ないような事由がある場合には、裁判官が、裁量により、免責許可の決定を出すことができます。
とは言え、やはり、リスクはありますので、免責不許可事由にあたる行為はしないことが一番です。
また、優先的に返済を受けた友人が、債務者が支払不能の状態となった後の返済だと認識していた場合など、一定の場合には、
管財人による「否認権の行使」により、
返済された金額が友人から回収され、
債権者の配当にあてられる破産財団に組み込まれることになるため、
友人にも受け取ったお金を返さないといけなくなるという迷惑がかかる場合があります。
⇒自己破産
個人再生(清算価値保証の原則)
個人再生においては、再生計画上、
債務者が返済していくことになる金額の総額を決める基準の一つとして、
配当相当額である清算価値(仮に債務者が自己破産をした場合に債権者に配当されると見込まれる金額)以上の金額を返済する必要があります。
これを「清算価値保証の原則」と言います。
清算価値は、債務者が自己破産をした場合を想定して計算されるところ、
自己破産では、先述のとおり、債務者が偏頗弁済をした場合、その返済を受けた債権者からお金が回収されて他の債権者への配当にあてられます。
個人再生手続においても同様に、清算価値保障の原則に基づいて、
清算価値に偏頗弁済の金額が上乗せされるのです。
したがって、個人再生手続において
返済しなければいけない債務総額が増えることになります。
以上のリスクから、
「債権者平等の原則」に反する、
一部債権者への優先的な返済は、しないのが一番です。
⇒民事再生
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