慰謝料・養育費と債務整理
Q.
慰謝料や養育費も債務整理の対象ですか?
A.
自己破産の場合
自己破産においては、免責許可の決定が確定すると、借金の返済義務が免除されますが、例外的に、返済義務を免除されない債務があります。
これらを、非免責債務と言い、破産法253条ただし書き1号~7号に規定されています。
慰謝料
このうち、破産法253条ただし書き2号は、
「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」と、
253条ただし書き3号は、
「破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)」
と定められています。
したがって、
故意に人を傷つけたことによる慰謝料や、
重大な過失による交通事故で人を怪我させたことによる慰謝料等は、
破産をしても支払を免れないことになります。
養育費
また、破産法253条ただし書き4号には、
「ロ 民法第760条(婚姻費用分担)の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務」「ハ 民法第766条(子の監護費用)の規定による子の監護に関する義務」
と定められています。
したがって、子の養育費については、破産をしても支払を免れないことになります。
⇒自己破産
個人再生の場合
再生手続開始「後」の養育費
個人再生においては、
原則として全ての債権について公平に、最低返済額の範囲で減額された金額にて、3年での分割返済となりますが、
例外として、再生手続によらず、随時弁済すべき債権が定められています。
そのうちの一つとして、民事再生法121条は、「共益債権」につき、再生手続の対象外すものとし、随時弁済すべきと定めています。
養育費のうち、再生手続開始「後」に発生した養育費については、
この「共益債権」にあたり、随時支払う必要があります。
再生手続開始「前」の養育費
これに対し、再生手続開始時点で滞納している養育費については、再生手続の対象にはなるものの、民事再生法229条3項により、
債権者(養育費の支払を受ける人)の同意がない限り、減額することができないものとされています。
したがって、滞納額からは減額されませんが、
他の債務と同様に、原則として3年の分割での支払となります。
慰謝料
慰謝料についても、
民事再生法229条3項に、
「一 再生債務者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」、
「二 再生債務者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)」
については、
債権者(慰謝料の支払を受ける人)の同意がない限り、減額することができないものとされています。
したがって、故意に人を傷つけたことによる慰謝料や、重大な過失による交通事故で人を怪我させたことによる慰謝料等は、
減額はされませんが、
他の債務と同様に、原則として3年の分割での支払となります。
⇒民事再生
任意整理の場合
任意整理については、裁判所を通じての手続ではなく、
法的な制約はないため
任意で養育費や慰謝料の減額について交渉することはできますが、
まず減額や長期分割に任意で応じてもらえることはないものと予想されます。
養育費については、養育費の金額を合意した時点から、事情の変化(仕事を失った、収入が減ったなど)があった場合には、
別途、養育費減額を求める調停等の手続をとるという方法も考えられます。
⇒任意整理
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